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ブレークするか、自動パーキング

自動車業界で働く特典の一つに、発売前の最新の自動車技術を自ら体験できることが挙げられる。数年前、有名メーカーの最新のSUVを二日間にわたり試乗する機会に恵まれたが、その際も初体験のテクノロジーがあった。ボタン一つで縦列駐車を自動で行う機能を試したのだが、自分では到底無理だと思われるような狭いスペースでも問題なく停められたのである。都会に住んでいると路上の駐車スペースを見つけるのに苦労するが、ほかのドライバーが見逃すような狭いスペースでも停められるのは実にありがたい。さらに駐車スペースを探す苦労から解放されれば、ドライバーが目的地で降車できるので文句なしである。

数年前に開発が始まった自動で行うバレーパーキング*の実験や公の場における実証試験を経て、さらに進化した自動で駐車する車が現実味を帯びてきた。実現すれば、全自動バレーパーキングというこれまでの自動パーキングとはレベルの異なる新たな価値を生み出すことを意味する。つまり、ドライバーは面倒な駐車スペース探しからも解放され、目的地で降車し、駐車の手間を全て車に任せることが可能になるのである。
*バレーパーキング:駐車場のスタッフがドライバーに代わり車を駐車してくれるサービス。

J.D. Powerは市場における数多くの未来技術の受容性を継続的に調査してきた。全自動バレーパーキングには自動パーキングという元となるテクノロジーがすでに存在する。両者の間には自動化レベルやドライバーの関与の度合いに大きな違いがある。そして、消費者が既存の自動パーキングを受け入れないようでは全自動バレーパーキングを敬遠するのは明らかだ。

補足すると、自動パーキングは様々な車種に搭載される既存の装備である。車が自動で駐車スペースの有無を確認し、縦列駐車や車庫入れをアシストするものである。車種により機能が異なり、ブレーキやギヤシフトなどの簡単な操作だけをドライバーが行うものから、全ての操作を車が行い、ドライバーは万が一の事態に備えて周囲に気を配るだけでよいものまでと様々である。特に縦列駐車が苦手な消費者に歓迎されるはずである。

しかし、驚くことに、自動パーキングが自分の車に付いていることを知りながらも「使わない」と回答する消費者がとても多い。J.D. Powerの2018 U.S. Tech Experience Index Study (TXI)調査では、過半数が使わないと回答している(一度も使ったことがない:47%、試した後に使用中止:8%)。

自動パーキング使用頻度
自動パーキング使用頻度

使ってみたことがない、あるいは使うのを止めてしまった回答者に理由を問うと、1/3以上が「不必要だから」と答え、28%が「使い方がわからないから」と回答した。

自動パーキングをまったく使わない主な理由
自動パーキングをまったく使わない主な理由

自動パーキングのメリットを感じず、そもそも使ったこともなければこういった装備の普及はおぼつかないであろうし、より進化した全自動バレーパーキングなども消費者に受け入れられにくいのではないだろうか。

こういった状況を打開するにはメーカー側は何をすればよいのか。まずはディーラーが自動パーキングをお客様に丁寧に説明し、わかりやすくデモンストレーションをすることが不可欠である。ディーラーによる説明がいかに重要かは、J.D. Powerが2018年のTXI調査で得た次のような回答が端的に示している。「最初に作動しているところを見てすごいと思いました。勇気を出して使ってみると、使い方がインパネにわかりやすく表示されていました。買ったときにディーラーがこういった説明をすべきだと思いました。」TXI調査によるとディーラーから説明を受けたと回答したのはわずかに半数にとどまった。多くのユーザーは自分で使い方を調べたり、マニュアルと首っ引きになったり、あるいは第三者の情報を見ながらなんとか使い方を覚えようとしているのである。

消費者に受け入れてもらうには装備の説明だけでは不十分である。自動パーキングはドライバーにとり何らかのメリットのあるものでなければならず、ドライバーに無理をさせたり、使いにくかったりしてもだめである。消費者の反応をみると、まだそういった課題を十分に克服できていないことがわかる。J.D. Power Advisory Services(J.D. Powerアドバイザリーサービス)が特に推奨・サポートしているのが製品開発の初期段階で消費者のニーズを効果的に取り込むという考え方である。

多くの消費者が使用を拒否したり使い方に難儀したりしている状態では、何か問題が起これば将来の自動運転に対する信頼感を傷つけることになりかねない。安心して駐車を車に任せることができなければ、自動で公道を運転する車など信頼できるはずがないのである。


代替交通手段がますます業界のかく乱要因になって行く中、消費者が現在そして将来、どのような移動手段を望むのかを理解することがこれまで以上に重要になってきております。このような急速な変化の中、J.D. Powerは自動車業界関係者に、消費者に関する重要で有益な考察を提供することを使命としております。こういった考察は、御社が市場に適した自動化戦略を開発する上で必ずや一助となると確信しております。

筆者紹介
Fabian Chowanetz
J.D. Power Europe 自動車部門シニア・コンサルタント
Fabian Chowanetzは、消費者の声を戦略企画や製品開発に活かせるようグローバルのクライアントをサポートいたします。車内HMIやデジタルサービスにおけるユーザーエクスペリエンス(UX)に関するコンサルティングの責任者です。

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