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自動運転は
収益力アップにつながるか?

UberとLyftが率いる配車サービスビジネスが、瞬く間に受け入れられ、従来型の交通手段へ大きな影響を与えていることは周知のことである。サービス利用者数と実績は増え続けている。

一方で、配車サービス会社が損失を積み上げていることも事実である。年間利益を公開していない(年度単位で利益を計上したことのない)Uberは、公表された業績によると2016年に28億ドル、2017年には45億ドルの損失を計上している。米国における配車サービスビジネス全体の売上(注:業界の規模を表すのに損益より売り上げの方が適切と思われる)の約20〜25%を占めると推定されるLyftは2016年に6億ドル、2017年にも更に6億ドルの損失を計上したとされる。

細かい財務内容を公表する必要のないUberとLyftの損失の大部分がどこに起因するのかは明らかになっていないが、専門家は損失の大部分を主に2つの要因に結びつけている。

まず、市場シェアを獲得し安定した顧客基盤と将来的な収益サイクルを構築するために、UberとLyftが乗り物の費用補助を行っている(乗車運賃を低く設定している)ことである。ある業界誌の推計によると、Uberの顧客は乗車コストのわずか41%しか支払っておらず 、会社および投資家が残りの費用を負担しているとされる。

収益を圧迫している2つ目の大きな要因は、ドライバーに支払うコストである。会社の数字は公開されていないものの、サービスの売上(「水揚げ」 注:タクシー業界用語)の65〜75%がドライバーに配分され、残りが会社に残ると推定される。UberとLyftの推定売上総額(つまり運賃総額)と純収入(総売り上げからドライバーへの支払額、払い戻し額などを差し引いたもの)は、下の表のとおりである。これを見ると、収益の大部分が配車サービス会社に入らないことが裏付けられる。

Uber and Lyft、推定総売り上げ/純収入、暦年ベース

出典:Business Insider、Bloomberg、Crunchbase、Future Advisor、Forbes 他の公表情報

配車サービス会社は損失を減らし徐々に収益性を上げるために様々な解決策を模索しているが(例:事前販売、まとめ売り、ドライバーへの支払額の引き下げ)、おそらく最も頻繁に俎上に上る解決策はドライバーをなくしてしまうことではないだろうか。これは、自動運転車両への大がかりな切り替えを意味する。なぜなら、ドライバーのコストを排除することができれば、配車サービス会社の収益性が急増するからである。

一見、自動運転車の導入は厄介な財政的課題に対する画期的な解決策のように思われる。しかし、このシナリオは十分に考え抜かれているのだろうか?ドライバーは確かに大きなコスト要因ではあるが、単なる運転手としてではなく重要なサービスも提供している。例えば、

  • 自費で車両を購入、登録、保険加入する。
  • 自分の時間を使い、定期的に自費で燃料を入れ、車内外を清掃し、メンテナンスをする。
  • 勤務時間外は自宅で車を駐車、保管するため、企業側の駐車場や防犯の費用がかからない(企業側が車両保管や防犯にかかる費用を負担しないで済む)。

自動運転車に移行することで、ドライバーへの支払いはなくなるが、他の運営上の課題や様々な課題が生じる可能性が高い。たとえば配車サービス会社は、自社で車両(おそらく数万か数十万、あるいは数百万台にもなり得る)を購入し、登録し、保険をかけたいと思うのだろうか。誰が給油し、メンテナンスをし、例えば乗客がゴミを残した場合にも車両がきれいな状態に保たれているかを確認するのだろうか。車両が使われていない時はどこに保管するのだろうか。そこで保管や防犯の費用が発生するのではないだろうか。

自社の製品やサービスを提供するのに独立したフランチャイズ店と協力することを選択する業界が一部であるのには理由がある。個人、特に会社組織にしている個人事業主は顧客との距離が遠い大企業よりも、製品や、顧客や、従業員に対してきちんと対応する傾向があるのである。

このような現実を踏まえると、自動運転車を使用する配車サービス会社は、最終的には各々のフランチャイズ店が車両の管理や運営を実施するフランチャイズ方式を選択する可能性が考えられる。あるいは異業種による3社合同配車サービス会社が出現するのかもしれない。つまり、自動車会社が自動運転車を提供し、配車サービス会社が集客と接客を担当し、サービス会社(レンタカー会社のような)が稼働していない車両の管理全般を担当する、といった具合である。

いずれにせよ、単にドライバーを排除して自動運転車に移行するだけでは配車ビジネス企業が突然大幅に収益性を改善することはないであろう。ドライバーのいない配車サービス会社が劇的な高収益体質を実現するには、自動運転車両の管理・運用やそれにかかわる費用などについて、まだまだ熟慮と綿密な計画が必要とされている。

筆者紹介
Tim Dunne
J.D. Power グローバルオート部門ディレクター。自動車の新しい検討方法や購入手段にとても関心があります。

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