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Z世代に受けが悪い電気自動車

J.D. Powerが最近、Z世代の自動車に関する意識調査を実施した折も折、姪と彼女のボーイフレンドが空港まで車で迎えに来てくれたので、同世代の彼らにも考えをきいてみたくなった。

「電気自動車かハイブリッド車を買いたいと思う?」と私は尋ねてみた。 二人とも大学を最近卒業して就職したばかりの新社会人である。最初にこたえてくれたのがボーイフレンドの方で、「環境に優しい電気自動車には興味がある」と悪くない反応が返ってきた。 しかし姪は、「私は興味ないわ」とにべもない。

車中、会話が進むにつれて彼らの考えもまとまってきたたようで、電気自動車(EV)がZ世代に思ったほど受けない理由について自分達なりの意見を教えてくれた。

この世代の若者にとり、自分にあった職業に就くことが最優先なのである。このプロセスは誰もが経験したように何年もかかるかもしれないのである。とりあえず初めて就いた仕事は、経験のないフルタイム勤務でアップアップの状態。おまけに学生ローンの返済に追われ、新しい職場の近くに引っ越すという大事業もこなさなくてはならない。増え続ける月々の支払いに加えこれ以上の支出はできるだけ控えたいというのが本音のようだ。交通手段に対する支出も例外ではなく、できるだけ抑えたいのである。姪は、「電気自動車を検討するよりも先にやらなきゃいけないことがたくさんあるの」と教えてくれた。

こういった考え方は、電気自動車に対する意識を分析したJ.D. Powerによる最新のパルス調査の結果と一致している。同調査によると2018年には、18〜24歳の消費者の54%がどのような種類の電気自動車であろうとも購入の検討はしないと回答している。 この割合は2017年の41%から大幅に上昇している。自動車メーカーにとり、明らかに都合の悪いトレンドである!

この世代が電気自動車を敬遠する要因はいくつもあるようだ。中でも若者達にとり大きな懸念材料は自宅での充電能力の有無。多くの新社会人が職場の近くでアパートを借りるが、こういった集合住宅の家主が入居者に充電設備を提供することに積極的であるとは限らないのである。さらに、どこかで充電しようにも公共の充電ステーションが十分な数だけ整備されていないか、所在が認知されていない場合が多く、EV利用者の不安を解消できないでいる。

充電ステーションを見かける頻度
充電ステーションを見かける頻度

Z世代が電気自動車にそれほど関心がない理由はほかにもある。その一つに、自動車メーカーによる告知活動があまり消費者に届いていないことが挙げられる。業界に何年も身を置く我々はメーカーがそういった努力をしていることを十分に認識している。しかし、自動車業界とは無縁で、新しい職場でいきなり全力投球しなければならない新社会人にとり、EVを検討するきっかけすらないのである。  やむを得ないことかも知れないが、アメリカで事業を展開する自動車メーカーは、広告費を収益性の高い車種に集中しがちで、ハイブリッド車や電気自動車にまで投入する余裕があまりないのが現状である。 もう一つの理由として、価格が通常のガソリン車と比べ高いため若者が電気自動車を敬遠するようだ。

EVがZ世代に受け入れられるには、多くのことを見直す必要がある。 広告費を増やせばEVに対する認知度が上がり、それが購入につながると考えられる。そうなれば、公共の場に限らず充電インフラが加速度的に整っていく可能性が生まれる。EVに乗る人が増えれば集合住宅などの家主が充電設備を設置するようになるからである。一つのきっかけでドミノのような波及効果が顕れ、若者達はあらゆる電気自動車を検討するようになる。 無策のままでいれば、電気自動車の購入を検討しないZ世代の若者の割合が54%のまま停滞することになる。

検討対象車種 - US Z世代
検討対象車種 - US Z世代

2019年にはさらに多くの種類の電気自動車が発売される予定なので、業界の人間としては54%という数字が改善されるものと楽観視したい。若者達が電気自動車を目にする機会が増え、関心をもってくれることに期待したい。


代替交通手段がますます業界のかく乱要因になって行く中、消費者が現在そして将来、どのような移動手段を望むのかを理解することがこれまで以上に重要になってきております。御社の活動拠点がアメリカ国内あるいは国外にあるにかかわらず、J.D. Powerは消費者に関する重要で有益な考察を提供することを使命としております。こういった考察は、御社が市場に適した電動化戦略を開発する上で必ずや一助となると確信しております。

筆者紹介
Heather Raulerson
Manager, Global Automotive Consulting, J.D. Power
Raulerson氏はGlobal Automotive Consulting Groupのマネージャーで、ブランドに相応しい価値を実現すべく消費者の声を届ける役割を担います。 専門分野はインフォテインメントシステムに特化したヒューマンマシンインターフェース(HMI)、先進運転支援システム(ADAS)、未来のモビリティ、コネクティビティおよび電気自動車です。

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