From China
新興電気自動車ブランドの勝算は?
10年前、上海で初めて自分の車を購入したが、ナンバープレートを入手する手続きが面倒であったことを記憶している。2ヶ月も待たされた上に自腹で3,000ドルを支払い、ようやく車を乗り出すことができたのである。そして今、ライフスタイルやライフステージが変化したので新車が必要となり、また同じプロセスを辿ることになった。ところが、そのプロセスがさらに大変なことになっていた。ナンバープレートを取得するためのオークションに参加したが、すでに1年以上も待たされている上に、仮に入手できたとしても費用が高騰している。最近の上海では$13,000もするのだ。
しかし、新車の購入を諦めたわけではない。作戦を変更し、優遇策が充実している電気自動車(EV)の購入を検討することにしたのだ。ほぼすべての大都市では公害対策として電気自動車やプラグインハイブリッド車などの購入を対象にナンバープレートが別枠で割当てられている。これに加え、高額の補助金が受け取れるので二重の優遇策となる。中国の新エネルギー車(NEV)奨励策は電動化された車両(EVおよびPHEV)の開発、および消費者の受容性を促進するために施行されたが、その恩恵に与れるというわけだ。残る筆者の課題は、どのEVを購入するかを決めることである。
2017年中に中国で発売された新型のEVおよびPHEVは約190車種にも上る。英調査会社のLMCオートモーティブ社の予測によると、2018年から2025年の間に1,000車種以上のEV やPHEVが中国で発売になるが、その結果、中国が世界で最大かつ最も競争の激しい市場になる。最近開催された2018年北京オートショーでは、地元の電気自動車メーカーであるNIOが、最新モデルのES8の販売に合わせて体験型ショールームのNIOハウスを発表した。同じ時期、これもまた新興EVブランドのWeltmeisterは、競合するSUV型EVの中で最安値といっていいほどの新モデルを発表した。
最近のJ.D. Power Pulse調査によれば、中国の顧客の95%以上が、次の新車を購入する際、新エネルギー車の購入を「非常に積極的に」あるいは「やや積極的に」検討すると回答。 さらに、86%が、将来的には「新エネルギー車が内燃機関車に取って代わる可能性が最も高い」に対し「まったく同意する」あるいは「ある程度同意する」と回答した。
中国の消費者はかなり慎重、かつ保守的に自動車ブランドを選ぶ。過去3年間でいくつもの新興EVメーカーが華々しくデビューし、大いに注目を集めたが、J.D. Powerと中国のグローバルタイムズが共同で実施した「中国新エネルギー車ブランド調査」によると、認知度や好意度はまだ従来の自動車メーカーに遥かに劣るのである。
本調査は中国の自動車ブランドに対する消費者の認識を調べたものだが、新規参入メーカー(ほとんどがインターネットかハイテク企業)の電気自動車を検討すると回答したのは9%に過ぎず、46%が従来の自動車メーカーの電気自動車を検討すると回答。45%が新規参入メーカーでも従来の自動車メーカーでも構わないと回答した。
同調査によると、中国のEVブランドで最も検討される上位5社は、BJEV、GACEV、Chery New Energy、NIO、およびWEY。上位3社は、それぞれBAIC、GAC、Cheryという実績のある従来の自動車メーカーの子会社である。新規参入組に対する認知度ではNIOが35社中、最も高い。
これは新規参入ブランドが従来のメーカーに追いつく可能性がほとんどないことを示しているわけではない。J.D. Power Brand Influence Scoreの指標をみると、新規参入ブランドと従来のメーカーとの差はわずか153(1,000点満点)に過ぎず、新規参入したEVメーカーがむしろ短期間(1-3年間)で大躍進したことを示す。したがって追いつく可能性が十分にあると言える。
自分のEV購入に話を戻すと、どのブランドのどのモデルを選ぶかで頭を悩ませている。 おそらく安全サイドをみて従来のメーカーから選ぶことになるだろうが、新規参入ブランドの魅力も捨てがたくなってきている。
- 筆者紹介
- Roger Zhang
J.D. Power上海オフィス所属のマーケティング担当スタッフ。流行に敏感で、次の車としてどのEVを選ぶか検討中。
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