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配車サービスビジネス
成功のカギは料金設定

新車を購入する際、所有や使用にかかる「1マイルあたりのコスト」について考える人はほとんどいない。代わりにアメリカ自動車協会(AAA)が毎年ガイドブックを発行し、「あなたの運転コスト」を調査してくれる。このガイドブックは、車の所有と使用にかかる年間費用の総額がわかるように分析し、そこで得た額を1マイルあたりのおおよそのコストに換算している。これは新車の購入を検討している人にとっては有益な情報である。UberやLyftのような配車サービスが急速に普及するなか、交通手段としての新車購入をやめ、配車サービスだけを利用することは果たして理にかなっているのだろうか。

AAAのガイドブックをベースに、さらに深く掘りさげるとこの問いに対する答えに到達できる。正直、両者の比較は容易ではなく、いくつかの工夫を要するものであった。

アメリカ合衆国運輸省によると、平均的なアメリカ人の年間走行距離が約13,474マイル* (約21,684キロ)、つまり月に約1,122マイル(約1,806キロ)ほど車を運転する。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)によると、アメリカの新車の平均燃費は24.8マイル/ガロン*であり、これを平均的な車の月間燃料消費量に換算すると約45.2ガロン(約171リットル)/月になる。 現在のガソリンの全国平均価格が1ガロンあたり2.58ドル(AAAによる)なので、平均的な新車ユーザーの毎月の燃料費は約116ドルとなる。

*1マイル=1.609344キロ
*1ガロン=3.785412リットル

これらの数字をもとに他のコストも調べてみた。一部の月間コストは推定される年間平均コストに基づいて案分し、その他は自分の経験や伝聞に基づき算出した。 内訳は以下の通り、

ローン支払いの平均月額
503ドル(出典、Experian社)
保険料の平均月額
100ドル(個人差が大きい項目だが100ドルとした)
車両登録費用の平均月額
20ドル
ガソリン代の平均月額
116ドル
メンテナンス費用の平均月額
20ドル
洗車費用の平均月額
30ドル
月間タイヤコスト(4年ごとの4本の交換費用が600ドルと仮定)
12.50ドル
駐車料金の平均月額
10ドル
月間費用の合計
811.50ドル

したがって、新車を所有および使用するために必要な月間費用は平均で800ドルを少し上回る(年換算で10,000ドル以下)。平均的な月間走行距離が1,122マイルなので、車の所有および使用にかかる費用は1マイルあたり約0.72ドルとなる。

ライドシェアサービスを利用する際の料金は変動要素が多い。車の種類、地域差、移動距離、および予約された時刻(例えば、交通量の少ない時間帯と多い時間帯)などにより料金が大きく変わる場合がある。

Uberが提供する個人向けサービスで最も安価なUberXを例に比較を試みる。ロサンゼルスでの料金は1マイルあたり0.90ドル。それに1分あたり0.15ドルが加算され、予約するたびに距離や時間に関係なく定額の2.10ドルが請求される。費用計算の例として自分のケースを取り上げてみると、オフィスまでの距離が8.2マイルなのでUberからの見積もりは大抵の場合10.57ドルが提示される。1マイルに換算すると1.28ドルである。この額は自分の車を利用する場合と比べると約8割ほど高い。通常のタクシーと比べるとUberの方がはるかに安いといえるが、このレベルでは自車の保有をやめてまで配車サービスに完全移行するのは間尺に合わない。

Uberや他の配車サービス会社は、1マイルあたりの価格を引き下げるために、さまざまなサービスパッケージの提供を試みている(たとえば20回分の前売りによる割引、ライドシェアサービス(相乗り)など)。

一方、経済面以外では利便性という点では配車サービスにも自車所有より有利な点がある。まずローンの支払い、保険の支払い、登録料の支払いなどの事務処理が必要なくなる。その上、給油、洗車やオイル交換などのメンテナンスも必要なくなる。駐車場を探したりする面倒もなくなる。通勤中の時間はリラックスしたり、より生産的なことに費やすなど、有効に使うことができる。さらに、筆者個人の経験ではライドシェアドライバーは非常に対応がよく、プロフェッショナルであると感じた。どの車も完璧に清掃され、メンテナンスもしっかりされており、終始わずらわしさとは無縁であった。

これらはすべて非常に魅力的なセールスポイントである。しかし、コスト重視の消費者を新車購入から配車サービスに完全に取り込むには、大幅な料金の引き下げが必要となるだろう。その時が到来するまでは、自分を含め消費者は、次の乗り物を選ぶためにショールームに足を運ぶだろう。

筆者紹介
Jim Dunne
Jim Dunneは、J.D. PowerのAnalytical center of excellenceのディレクターである。配車サービスの妥当性に計算をし続けるだろうが、今のところ自車所有を諦める予定はない。

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