From Germany
ドイツの消費者が
電気自動車に消極的なわけ
直近のロサンゼルスやデトロイト・モーターショー及びラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(世界最大級の家電見本市)などで見られた多くのニューモデルや新技術が示すように、電気自動車(EV)は世界の主要なモビリティの手段として成長し続けている。 EVの製品攻勢は世界中を席巻しているが、ドイツでも当然ながら同様の現象が起きている。 しかし、ドイツの消費者はそういった動きに目を向けているだろうか。また、EVを受け入れる準備ができているだろうか。
J.D. Powerヨーロッパオフィスによる最近のパルス調査によると、ドイツの消費者の74%が、次の新車購入時になんらかの電動自動車(ハイブリッド、プラグインハイブリッド、フルEV、または燃料電池車)を少なくとも検討はしてみると回答している。 それなりに注目に値する数字であるが、J.D. Power が2017年に行った前回の調査から変わらないままである。
対照的に中国では、消費者の96%が次の新車購入時にEVを検討すると回答している。 EVが圧倒的に受け入れられていることを如実に物語る数字である。 EVに対する全面的とも言える高い支持率は、メーカーの電動化戦略において中国市場の重要性を十分に再認識させるのである。
ドイツでは男性と比べると、EVの購入を検討しない女性が2倍にものぼる(購入検討しない割合が、女性が35%に対し男性は17%)。EVに対する男女の温度差は興味深いが、さらに詳しく見ると原因が2つあることがわかる。 第一に、女性は男性よりもEVの安全性に対して不安に思う割合が高い(女性が16%に対し、男性は11%)のである。 第二に、性能が悪そうだからEVを買うのを控えるとする女性が、男性の10%に対して16%もいるのである。
年齢も購入検討率に影響している。ドイツの消費者のうち60歳以上の1/3近くがEVの購入を検討しないと回答しており、18〜29歳の僅か9%と比べるとかなりの差があることがわかる。
ドイツの消費者の主な懸念事項は、航続距離が限られていること(73%)、 充電ステーションの有無(67%)、 割高な初期購入費用(64%)および充電時間(60%)である。
留意しなければならないのは、回答者の62%が自宅で手軽に充電できる設備を持っていないことである。自宅にEV用の電気コンセント、或いは駐車スペースそのものがないのである。 非接触充電、バッテリ交換方式及びバッテリのリースといった、革新的な充電方法が提供されるようになっても、ドイツ人はEVの利便性に納得していない。また、こういった新しい充電方法を認知しているドイツ人を対象にした調査でも、新しい方式にメリットを感じると回答したのはわずかに22%である。
ドイツ人のEVに対する関心度を高める方法はあるのだろうか?
ドイツのほとんどの消費者はEVに関心がないわけではないが、ここ数年購入意向に関しては高まる様子はなく、どちらかというと停滞しているのが現状である。これはメーカーとしてはあまり歓迎すべき状況ではない。
消費者のEVに対する関心レベルを高め、購入を検討するだけの段階から実際に購入してもらうところまで持っていくにはメーカーはどうすればよいのか。消費者に対する理解が不足している部分はどこにあるのか。
こういった疑問にこたえるのは容易ではない。懐疑的な見方も市場に溢れている。 どのような場合でも懐疑的な見方をする消費者は、製品やその役割をひたすら信奉する消費者と違い、容易に購入を決断しない。EVでもそうだが、 自動車メーカーは単に最高のEVを開発し、世に送り出せばよいというものではないのである。
代替交通手段がますます業界のかく乱要因になって行く中、消費者が現在そして将来、どのような移動手段を望むのかを理解することがこれまで以上に重要になってきております。このように急速に変化する環境下で、J.D. Power社は自動車メーカーや他の業界関係者に、消費者に関する重要で有益な考察を提供することを使命としております。こういった考察は、御社が市場に適した電動化戦略を開発する上で必ずや一助となると確信しております。
- 筆者紹介
- Dr. Tanja Schweiger
オートモーティブソリューションズ部マネージャー。モビリティの未来やヨーロッパにおける新規調査・研究の企画、実行及び内容に対する責任者。
Julian Busch
モビリティの未来といったテーマを中心に、J.D. Power Europeの調査およびコンサルティング活動をサポートしています。
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