From India

思ったよりも低空飛行。
インドの配車サービス事情。

インドのモビリティセクターは大きな変革のうねりの真っただ中にいる。黎明期のモビリティは、人々の購買力が増し、自家用車や商用車を個人で購入することから始まったが、今ではあらゆる形の移動手段が登場するまでに進化した。インドでは公共交通手段が発達しており、あまり不自由することもないが、最近ではさらに便利になっており、配車アプリサービスやカーシェアリングアプリサービスが普及し始めている。各種サービスにおける普及の度合いはまだ地域により大きく異なる。

インドでは毎日のように頻繁かつ迅速に移動しなくてはならない人々が何億といる。こういったニーズがあるなか、僻地にまで押し寄せてきたデジタル化の波のおかげで新しい移動手段が登場した。新規参入組は既存の産業に対するかく乱要因となり、結果的にインドを最も競争の激しい市場に育てた。

最近実施されたJ.D. Powerの調査によると、インドでは43%が配車アプリサービスを利用したことがあると回答した。おかげでインドの配車サービス業界は2018年通期で約3.71億ドルの売上を計上すると見込まれる。成長は年率20%ほどになり、今後もさらなる成長が見込まれる。2022年までに配車サービス利用者が3.9%ほどに増え、ユーザー総数が5,840万人になると予想されている。

配車アプリサービスの登場以降、ニーズに合わせたサービスを提供し独自のポジションを築くという新たなビジネスチャンスが生まれた。お仕着せのサービスなど出る幕がないのである。

インドで展開する配車アプリサービス大手の2社、OlaとUberはこの業界における急成長の申し子だ。顧客のニーズに合わせて自由に車種を選べるサービスに加え、定期利用者には専用のパスを発行するなどしている。

インドにおける配車サービス利用理由
インドにおける配車サービス利用理由

配車アプリサービスの普及は顧客の属性や好み、そして技術の進歩の度合いに影響される面もあるが、現在提供されているアプリが便利で使いやすいということは疑いようもない。「低コスト」が配車サービス利用理由のトップにくるが、利用者の多い18-34歳の顧客にこの傾向が顕著である。よって、各社は利用コストとサービスの革新をうまくバランスさせることが肝要である。

配車アプリ業界が伸びているのは事実であるが、同じ調査によると非常に多くの顧客が依然自家用車を所有することに拘っている。配車サービスをこれだけ多くの業者が提供しているにもかかわらず、まだ利用率が停滞しているのが現状だ。同調査では、配車サービス利用にあたり大きな懸念として「個人の安全・プライバシー確保」が、「車両の確保」の次に挙げられていた。この傾向は女性の場合に顕著であった。

インドの配車サービス利用に対する懸念点
インドの配車サービス利用に対する懸念点

女性回答者のほとんどが、他国で導入済みの女性専用配車アプリサービスに関心を示した。

インドのモビリティ業界がさらに発展するためには業界外のさまざまなステークホルダーとの密接な協力関係が不可欠である。インド政府の役割も大きく、すでに多くの取り組みを主導しており、配車サービスを普及させることによりモビリティセクターにおける排気ガス由来の公害低減を試みている。また、市民の足を増やすべく、バス、自動二輪およびオート力車にもライド・シェアリング(相乗りサービス)を認可することが検討されている。

配車アプリサービス普及に向けて、業界にもできることが色々とある。
例えば;

  • プロモーションや様々な支援活動を通じ顧客を啓蒙すること。特に配車サービスの利用意向が最も低い50歳代以上をターゲットにする必要がある。
  • 様々な顧客セグメントに適応したきめ細かなサービスを提供する。人により、A地点からB地点までの移動だけで事足りる場合もあれば、よりプレミアムなサービスを求めることもあるはずである。前述の女性専用サービスを求める女性もいるだろうし、コストや移動時間を最適化できるよう、移動手段を複合的に組み合わせたマルチモーダルに対するニーズが高いことも予想される。
  • 優れた顧客サービスの重要性を理解することも必要である。J.D. Powerの調査によると、67%が顧客サービス向上の研修を受けたドライバーを選択できることが重要であると回答している。
  • 既存の車種を配車サービスに使うにはコスト、効率および排出ガスなどで不利な面もあるので、こういった問題を緩和する専用車を開発・提供することにより、自動車メーカーも配車アプリサービス業界に貢献することができる。

こういった取り組みはまだ産声を上げたばかりであるが、関係者が一体となり、行政からのサポートを引き出すことができれば配車サービスのメリットをより多くの人が享受できるようになる。しかしながら、インドではまだまだ自家用車の所有が好まれる傾向がはっきりと出ている。

インドで好まれる交通手段
インドで好まれる交通手段

インドではこういった新規の代替交通手段が徐々に勢いを増してきている。配車アプリサービス以外にも、普及速度はまだ遅いものの、カーシェアリングアプリサービスのような画期的なサービスが次々と登場している。十億人以上の人口を擁するインドでデジタル化が抵抗なく受け入れられており、その結果、新規のサービスが便利で安価な交通手段を提供するに至っている。しかし、メリットとされる渋滞の緩和、排気ガスの低減やコスト削減などを広範囲に実現するには、このようなサービスを他の地域でも積極的に導入し、さらなる成長を遂げなければならない。そのためには「全員参加」が不可欠である。


代替交通手段がますます業界のかく乱要因になって行く中、顧客が現在そして将来、どのような移動手段を望むのかを理解することがこれまで以上に重要になってきております。御社の活動拠点がインド国内あるいは国外にあるにかかわらず、J.D. Power社は顧客に関する重要で有益な考察を提供することを使命としております。こういった考察は、御社が配車サービス向けの市場に適した顧客サービスエクセレンス(接遇マナー)プログラムを開発する上で必ずや一助となると確信しております。

筆者紹介
Shantanu Nandi Majumdar
Regional Director, Automotive Practice, J.D. Power
Shantanuは自動車部門のリーダーとしてAPAC地域のインド、フィリピン、マレーシア、およびUAEの各国を統括しております。同氏の専門は自動車販売、顧客囲い込み、および車両品質にまたがります。モビリティ業界におけるシェアリングやサブスクリンプションサービスなどのかく乱要因に関し、多くの場で意見を発信しています。

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