From Japan

自動運転技術に対する受容性

2035年のある日、スマートウオッチでカーシェアリングサービスをオーダーすると、すぐに無人運転の車が目の前に停車した。電気で動く完全自動運転の車両に乗り込み、音声で行先を告げ、あとは車内で仕事に没頭することができる。道路はほぼ自動運転車しか通行しなくなったので渋滞がなく、事故に遭う確率も低いのでイライラやストレスもない。
このような「夢のモビリティ」は2018年に住む我々にとり、まだ先の話のように思えるが、実現に向けて確実に前進しており、特に自動運転技術の開発が日進月歩だ。その推進力となっているのが交通事故(理想的には死亡事故ゼロを目指して)、渋滞や公害などをなくし、持続可能なモビリティといったビジョンの実現に向けての動きである。こういったビジョンは日本だけでなく、世界中で共有されている。

しかし、技術的な問題を解決するだけでこういった未来が実現するわけではなく、日本の消費者がそれを受け入れる準備ができているかを見極める必要もある。

新しいモビリティの受容性に焦点を当てたJ.D. パワーによる最新のパルス調査によると、完全自動運転と、先進運転支援システム(ADAS)に対するユーザーの信頼度にだいぶ差があることが分かった。しかし、完全自動運転に対する抵抗感に関してはU.S.やドイツと比べると弱いようである。また自動運転の基盤技術であるADASが比較的どれも信頼されていることも日本の特徴といえる。

自動運転技術について、あなたはどの程度信頼していますか?

驚くことに初期のADAS技術が初めて登場してすでに20年ほどが経つが、ようやく価格もこなれてきて、普及率も高まってきた。これは自動運転に向けての技術的道筋が現実的なものになっていることを示している。

こういった状況の中、2016年に登場した日産のプロパイロットがヒットしたのも頷ける。この装備はACCとLKASを組み合わせたもので、ミニバンのセレナという大衆商品に初めて採用されたことが評価された。オプション価格が他の装備とセットになるが25万円以上。それでも発売以来、コンスタントに半分以上のセレナ購入者が注文しているのである。日産によると、購入者から「自動運転を体験してみたかった」と言った声が数多く寄せられており、自動運転に対する関心の高さをうかがわせる。

Pro Pilotが好意的に受け入れられているのを見ると、世の中が自動運転に向かってまっしぐらとの印象を受ける。しかし、ユーザーの体験が好意的であっても、まだいくつかの懸念事項があるのでこれらに積極的に対処する必要もある。J.D. Powerの最近の調査によると、U.S.、中国およびドイツでは「技術的な不良」が最大の懸念点であり、日本では「事故の際の法的責任」が最も懸念されている。

完全な自動運転の車について、あなたの最大の懸念は何ですか?

まだユーザーの大多数が自動運転の導入に不安を感じているようだが、今日の車に依存したモビリティは経済的でも持続可能でもない。完全自動運転の実用化が目前に迫っているので、早急に消費者の期待に応え、信頼の醸成に努めなければならない。そして、より大切なのは完全自動運転が実現する新しいモビリティのモデルがどのように生活を豊にするかをユーザーに丁寧に知らせることであり、それが伝わればより大きな理解、そして支持が得られる。

もはや「夢」ではなく、技術的には実現の目途がたってきた近未来のモビリティ。この新技術がたらす数々の豊な生活について消費者に語ることができる段階に到達した。政府やメーカーが共に自動運転がもたらす可能性について、信頼できるメッセージとして人口に膾炙するときが来たのである。そして、官民一体となって技術的信頼性、法制度、インフラなどあらゆるハードルを乗り越え、実現に向けて世論を引っ張って欲しい。

筆者紹介
川橋 敦
ジャパン・オートモーティブ部門 シニアディレクター
1997年の入社以来、自動車初期品質調査(IQS)、自動車商品魅力度調査(APEAL)など自動車調査の実施に携わるエキスパート。
先進安全技術には関心が高いものの、プライベートでは先進技術を搭載しない70年代のビンテージカーをこよなく愛する。
出張の移動もレンタカーという大の運転好き。

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