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共存できる公共交通手段と
自動運転車

最近、ロサンゼルス郡で売上税が0.5セント引き上げられた。税収増は今後40年間で1200億ドルにものぼると推定され、その大部分が郡の鉄道網の拡充に充てられる予定だ。

税収の主な使い道は、510平方マイルもの広さのあるロサンゼルス郡を東から西、北から南と端から端までつなぐ、ロサンゼルス市をハブとした10本程度の新しい鉄道路線の建設である。路線拡充の目的はロサンゼルスの悪名高い交通渋滞を緩和し、燃料消費と排出ガスを削減し、同郡の人口の20〜25%、現在の3倍以上、を公共交通手段の利用者に転向させることである。

しかし、このような計画に対し大きな疑問がわく。自動運転車が4〜5年後には実用化されると言われているなか、公共交通手段への巨額の投資は税金の無駄ではないかと指摘されてもおかしくない。ところが、業界の動向やデータなどを詳細に分析すればこのような疑問を明確に否定することができる。ここまで断定するのを訝しがる読者もいるだろうが、ようするに誰もが満足する解決策など存在しないということである。人により交通手段のニーズが異なるのである。

国連のWorld Urbanization Prospects(世界都市化予測)によれば、世界の都市人口は2007年に初めて地方人口を上回った。そのとき以来、世界的に都市化が進み2016年には全人口の約56%が都市部に住むに至っている。国連は2050年までに全人口の66%が都市部に住むと推定している。

こういった都市部への大移動が続くと人口100万人以上の都市が2015年の488都市から2030年には662都市以上に増えると予想されている。また、大都市(人口5百万〜1千万人)とメガシティ(人口1千万人以上)が同じ期間に71都市から104都市に増加すると予測されている。

世界の都市化の伸展

都市部への移住は米国において特に顕著である。米国国勢調査局によると、米国の都市部に住んでいる人口の割合は現在81%であるが2050年には87%に増加すると見込んでいる。

都心部における人口割合

交通渋滞や自家用車の駐車スペース不足の問題を抱える人口密度の高い都市部において、これ以上の自家用車を受け入れるのは明らかに困難である。米国を中心に都市化が確実に進む中、大都市の多くが公共交通機関の拡充にむけて計画・投資するのは当然である。

また、通勤時間の長さや駐車スペース確保の難しさにおいて、米国の大都市の多くは最悪の部類にランクされている。ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、ボストン、シアトル、サンフランシスコ、デンバー、フィラデルフィアやフェニックスなど多くの都市では、何百万人もの住民を効率的に運ぶためにライトレールやバス専用レーンを含むエコな輸送システムを構築する必要がある。

こういった交通システムは、生活圏や仕事場が駅やバス停から徒歩圏内であれば大変便利である。しかし、そうでない場合はどうなるであろうか。物流業界では、この難問は「ファーストマイル、ラストマイル」(FMLM)として知られている。大量輸送手段は人々(または貨物)を長距離の大半を運ぶことができるが、人や物資を効率的に動かす上で最大の障害となるのが輸送の最初の1マイルと最後の1マイルなのである。

例えばヒューストン市は約625平方マイルの広さがあるため都市の住民の大半を網羅する公共交通機関網を構築するのは現実的でない上に採算という点でも無理がある。デンバー、シアトル、デトロイトなどの小規模な都市でさえ140-155平方マイルの広さがあり、多くの住民が市の外れや郊外に住んでいる。こういった人々がどうやって都心部のオフィスに通勤するかは問題なのである。

自家用、あるいはUberやLyftのような配車サービスが運営する自動運転車が通勤者を駅までの送迎を担い、さらには予約してあったテイクアウトのお弁当やクリーニングの引き取りまでできるようになればどうであろう。駅の有料駐車場やパークアンドライドに自分の車を一日中預けるよりもずっと魅力的ではないだろうか。

こうなればそれぞれの交通手段が強みを発揮し、公共交通機関とFMLMの問題が解決される見通しが立つ。これまでの公共交通機関と新興のモビリティソリューションが互いに競争するのではなく、補完し合うことにより最も効率的な通勤手段が実現でき、人々の住む場所の選択肢が広がるのである。

実際に様々な交通手段を統合させて運用するには大きなハードルがあるに違いなく、州から市町村レベルの政府までが一体となりこのようなプロジェクトの真のコストやメリットを市民に説明する義務がある。この場合のメリットとは短期的な雇用創出などではなく、長い目で見て生活の質を妥当なコストで改善できるという点である。そうでなければ納税者は誰も乗らない高速鉄道のつけを払わされることになるのである。

これからも都市化、自動運転の普及および公共交通機関の拡充などが進むことは明らかである。これらを全体としてどのようにうまく組み合わせ、すべての人にとり最も効率的で経済的なシステムを作り出せるかを考える時がきたのである。

筆者紹介
David Amodeo
J.D. Powerの自動車品質担当上級マネージャーです。できる限り車から降り、電車に乗るのが好きです。

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